地域の魅力徹底研究セミナー

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「究極のもてなし」を楽しむ場
浅草で体験するお座敷遊びの魅力とは

見番画像

東京を訪れる人に地域の魅力をどのように伝えるか。日本の歴史・文化などに関心のある人を対象に、日本文化体験交流塾が主催したガイド能力を高めるセミナーの一環で、このたび江戸情緒の残る浅草を探訪、約20名のセミナー参加者は見番(けんばん)を見学し花柳界について学んだ。

「自分とは縁がない」と思われがちな芸者遊び。しかし、どのような世界か密かに興味を持っている人も多いのではないだろうか。

千葉氏画像
東京浅草組合の千葉慶二事務長の説明を聞きながら、ベールに包まれていたような世界がどんどん明らかになってくる。

「フジヤマ芸者」という誤ったイメージを持っている人もいるが、そもそも芸者とは「芸は売るが身は売らない」、踊りや三味線など日本の伝統芸能で宴を盛り上げるプロフェッショナルだ。あでやかに踊る「立方(たちかた)」と三味線、笛、太鼓などを演奏しながら唄う「地方(じかた)」に分かれる。浅草には現在、「幇間(ほうかん)」というお座敷で雰囲気を盛り上げる道化的な役割をする男性の芸者4名を含めて、芸者が50人いるという。

花柳界はこの「芸者」、遊びの場や料理を提供する「料亭(りょうてい)」、芸者が所属する「置屋(おきや)」から成り立ち、それらの連絡事務所を「見番」という。東京には浅草、赤坂、向島、新橋、神楽坂、芳町の6つの見番がある。
 
お座敷の魅力をひとことでいうと、「贅を尽くした空間を占有し、美味しい料理とお酒、芸者さんとの会話を楽しみ、磨かれた芸を見ること」と千葉事務長。芸者遊びは最高のもてなし、究極の接待を楽しむ場だ。順番としては、踊りを見てから、酒席で芸者さんにお酒や話の相手をしてもらう流れ。

香名恵さん画像
千万さん画像
紫沙さん画像
 
ここで、芸者の香名恵(かなえ)さんと千万(ちま)さんが、紫沙(しさ)さんの三味線弾き歌いに合わせ、古典作品の一部を4曲特別に披露してくれた。

投扇画像
帯の結び方、着物や日本髪の種類などについての紹介の後、参加者たちはまた、お座敷遊びのひとつである「投扇興(とうせんきょう)」も教えてもらう。

広げた扇子を投げて箱上の的に当てるゲームだが、扇子が箱面に当たってしまうと減点され、的に当てるのはなかなか難しい。浅草の其扇流の得点は「桐壺」や「夕霧」、「夢浮橋」や「花宴」などといった『源氏物語』にちなんだ名称が用いられており、お座敷遊びの風雅な雰囲気を更に高めている。

 
ところで、何歳から芸者になることができるのだろうか。
千葉事務長によると「満18歳以上」とのことで、それ以前はお稽古ができるのみだ。

芸者は日本舞踊、長唄、小唄、三味線など何でもできなければならず、その稽古はかなり厳しい。
最初は「お見習い」としてこの世界に入り、芸者の卵になると「半玉(はんぎょく)」、一人前になってはじめて「芸者」と呼ばれるようになる。 芸者のマニュアルはあってないようなもの。お酌の仕方ひとつとっても、基本的なことは習うが、先輩たちの動きを見ながら現場で覚えていくという。
一人前になるには時間がかかるが、定年がないので生涯続けられるのが芸者の仕事の魅力でもある。また、収入の半分ぐらいはお稽古料、おつきあい、着物代など経費になってしまうため、芸者の手取りは少ない。

見番見学もたけなわ、参加者から「芸者になった動機」や「生活スタイル」などについて矢継ぎ早に質問が。

動機については「日本舞踊が好きで」、「女性にとって憧れの世界」など。
紫沙さんの場合はもともと三味線をやっていて芸者にならないかと勧められたというが、芸者の数は足りているので現在のところ浅草では募集はしていないという。

生活スケジュールは日によって全く違うそうだ。ある一日を例にとると、午前10時30分頃起床し、午後4時頃までお稽古など。その後食事してから40分ぐらいで身支度をし、お座敷に出る。早くて夜9時-10時頃、遅くて午前2時-3時に終わるという。芸者さんの休みは料亭と同じで基本的に日曜日、祝日だそうだ。

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芸者さんの名前の決め方はどうするのだろう。参加者からの新たな質問に、「置屋によって違うが、希望する名前があれば、お母さん(経営者)に相談してふさわしい名前を決めます」との千葉事務長の答えだった。昔は動物や男性の名などもつけていたが、今は普通の名前が多いという。

ところで、気になる芸者遊びの「玉代(ぎょくだい)」は。
費用は店によっても異なるが、例えば「4人で飲食、芸者2人を頼んだ2時間のお座敷」の場合、ひとりあたり4万円余りとなる。内訳は料理ひとりあたり2万円が4人で8万円。飲み物がひとりあたり5000円として4人で2万円。芸者さんへの花代(給料)、祝儀(チップ)などで約4万円。席料、サービス料、税金もあわせて、合計費用は4人で約16万円余りとなるからだ。お座敷で食事をしないで、軽いおつまみ程度にした場合は、もっと手頃な料金で芸者遊びが楽しめる。
「予算を組んで『この範囲でお願いします』と事前に女将に希望を伝え、遊ぶのがおススメの方法ですね」と千葉事務長も話していた。

最後に、このようなお座敷遊びをしてみたい場合、どこで申し込めばよいのだろう。

従来は全ての料金が「信用貸し」で後払いのため、確かな紹介者がない限り、自分で座敷に上がることはできなかった。しかし、近年は一流ホテルやカード会社の紹介、予約を入れれば座敷に上がれ、カード決済のできる店もあるという。ホテルのフロントやカード会社の案内デスクに相談するのも一つの方法とのこと。

敷居が高かったイメージの花柳界、少しは近づきやすくなっただろうか。
投扇画像
 

文章:「東方時報」 遠藤英湖
写真:日本文化体験交流塾


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